江戸狛犬修理

東京近郊の神社での工事中に、誤って狛犬にトラックでぶつかり、台座と狛犬が地面に落下し大きく何箇所か欠けてしまった。
新しく造り直すか修理可能かの見積り依頼が在り、送られてきた画像で判断した、原石の供給が止まっていて彫り直しは出来ない。

幸い土手の裏面に狛犬が落ちた為、左の上顎・下顎・前足・子獅子・台座が折れてしまっているが、砕けてなくパーツは残っていた、時間は掛かるが一
つずつ貼り合わせて行く、以前にも一度落ちた痕が在りセメントで補修してある、コンクリートと足りないパーツは安山岩の端材で造作してすり合わせる
子獅子の尻尾は最初から無かった。

台座の貼り合わせ、子獅子はそっくり抜け落ちていて、足が四本独立して彫られていて、一本ずつ慎重に取り付けて行く、親の上顎は風化も進んで
いて砕けた個所もあり、エポキシ系の接着剤で盛り上げ、前歯等を彫刻した。

下顎と胸周りは、風化でぼろぼろの状態、口の開いている部分に接着剤をすり込み補強。

日数は掛かったが仕事の内容は、接着剤を付け固まると次へ進むの繰り返し、パーツを作って組み上げるのも楽しかったが、江戸狛犬の割寸法や関
東の職人の仕事ぶりが判った。狛犬自体は大正十三年製で江戸狛犬が彫れる最後の職人の仕事かもしれない、石は余り硬くは無いが彫りやすい石
で細かく彫って有り、足元と背中に子獅子が載っている。


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